日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
総説
慢性炎症と加齢関連疾患
真鍋 一郎
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2017 年 54 巻 2 号 p. 105-113

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抄録

慢性炎症は生活習慣病やがんを含む加齢関連疾患に共通する基盤病態である.また,高齢者では慢性炎症が起きやすくなっており,加齢に伴う炎症(inflammaging)が加齢関連疾患の発症や進展に寄与していることが考えられる.高齢者で慢性炎症が起きやすくなっている原因として,加齢に伴う免疫系自体の変化(免疫老化),組織の変化や全身的な代謝や内分泌系の変化など,多様な要因が複雑に絡み合っていると考えられる.免疫老化は,免疫系の正確性と効率を低下させ,獲得免疫系の低下をもたらすだけでなく,慢性炎症も起こりやすくする.組織では自然免疫系を活性化するダメージ関連分子パターンの増加や,老化細胞からのSASP因子が炎症を誘導・促進する.ホルモンや代謝の変動による体内の内部環境の変化も炎症の基盤となる.加齢に伴う慢性炎症の誘導と拡大を制御する分子機序の解明は加齢関連疾患の理解の上で重要であり,新たな治療標的やバイオマーカーの同定にもつながるだろう.

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© 2017 一般社団法人 日本老年医学会
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